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Peanuts Blog[かぎや盛岡べん別館]

コロナ禍は厳しい…その時々の気づきを書き綴ります。55歳過ぎての、定年前のシルバー起業。 このままでは楽しくないと… 横浜市の支援と信用保証、銀行融資を活用して、必要な国家資格などを取得。生業としてこれからの働き方改革を自分自身に適用しました。

シャープが鴻海ではなくサムスンと資本提携したことで、台湾のIT業界には失望感が漂っている(台湾・友達光電の工場)

ここに衝撃的な記事がある。
本日の日経新聞である。サムソンの台湾企業滅亡計画がそれだ。
台湾鴻海の交渉の壁をあげたままでの状況下で、シャープとの交渉権を有利にさせ、締結をする。金がものを言うサムソンができることだ。
ここまでできるようになると、対岸の火事では済まされない。

サムスンにおびえる台湾勢

半導体・液晶業界窮地に 「順次撃破」されシェア失う
サムスンの台湾滅亡計画」。3月に発売された台湾の主要週刊誌「今周刊」の表紙に、刺激的な文字が躍った。記事は過去にサムスンに勤務していた台湾人幹部の話をもとに構成。2008年のサムスンの最高経営会議で「台湾のIT(情報技術)産業を順番につぶしていく」という方針が示され、台湾の半導体DRAMや液晶パネル大手メーカーの経営が苦境に陥ったのはそのせいというのだ。



シャープが鴻海ではなくサムスン資本提携したことで、台湾のIT業界には失望感が漂っている(台湾・友達光電の工場)

幹部派遣し徹底研究


 今周刊の記事によると、06〜07年ごろの台湾のDRAMや液晶パネル大手の躍進をサムスンが危惧。台湾に幹部を多数派遣してIT産業を徹底的に研究し、「滅亡計画」を作成したという。まず狙いを付けたのはDRAM。サムスンは08年の世界金融危機発生後もあえて設備投資を断行し、台湾勢など下位メーカーをふり落とした。その結果、台湾大手の力晶科技や茂徳科技など大手が経営悪化で12年に相次ぎ上場を廃止。DRAMは台湾の主力産業の地位から滑り落ちた。

 液晶パネルでも、サムスンは自社のテレビ向けの台湾大手からのパネル調達量を大幅に削減。10年に韓台のパネル大手が欧州連合(EU)からカルテルの制裁金として約6億5000万ユーロ(約820億円)を科された際には、サムスンのみが当局に情報を提供して制裁金を免れた。こうした制裁金が台湾勢の経営の重荷になった面もあり、12年10〜12月期時点では群創光電(旧奇美電子)は10四半期連続、友達光電(AUO)は9四半期連続の最終赤字に陥っている。

 DRAMの11年のシェアは韓国のサムスンとハイニックス半導体(現SKハイニックス)の2社のシェアが約65%に対し、台湾勢のシェアは約8%(米調査会社のIHSアイサプライ調べ)。液晶パネルでも韓国のサムスンとLGディスプレー2社のシェア約44%に対し、台湾2社は約29%と水をあけられている(米NPDディスプレイサーチのデータを基に算出)。

 「台湾ブランドの希望の星」として期待が高かったスマートフォンスマホ)大手の宏達国際電子(HTC)もサムスンの大攻勢で11年後半からシェアが急速に減退。12年10〜12月期にはスマホの世界シェア上位5社から姿を消した。

 折しも3月6日にシャープがサムスンとの資本提携を発表。鴻海(ホンハイ)精密工業との「日台連合」の象徴でもあっただけに、台湾IT産業に失望と警戒感が広がっていた。今周刊の記事はこれに追い打ちをかけ、台湾でのサムスン脅威論を一気に再燃させた。

成長企業の芽摘む


 そしてサムスンが現在、攻勢をかけている相手が台湾積体電路製造(TSMC)と鴻海精密工業だ。TSMCは半導体受託生産(ファウンドリー)業界で世界シェア4〜5割と断トツのシェアを誇るが、市場の成長性を見込んだサムスンも受託生産を積極化。米調査会社のICインサイツによるとサムスンは12年の世界シェアで3位に浮上。前年2位だった台湾の聯華電子(UMC)を4位に追い落としたうえ、TSMCのシェア侵食を図っている。

 シャープと出資交渉中の鴻海に対しても、サムスンはシャープを自陣営に引き寄せることで鴻海との関係にくさびを打ち込んだ。鴻海は「1株当たり550円でシャープに9.9%出資する」という条件を見直したうえでのシャープとの交渉継続を望んでいるが、サムスンはシャープとの出資契約で「鴻海からの出資条件は見直さない」との文言を盛り込ませた。交渉のハードルを上げ、シャープの技術を必要とする鴻海の成長の芽を摘もうとする深謀遠慮があるとも取れる。

 日本の技術を活用してという成長モデルはサムスンも同じだが、最近は有機ELパネルをいち早く商品化するなどフロントランナーへの脱皮を模索中。一方、台湾ではIT各社が業界横断で連携してサムスンに対抗しようとの論調が盛んだが、TSMCの張忠謀董事長は「台湾にはスマホも液晶パネルも大手企業がある。各社が自分の領域でサムスンを上回れば、勝てる」と安易な連携論を戒める。

 HTCの周永明・最高経営責任者(CEO)は昨秋、「マーケティングに対する意識が低かった」と反省の弁を述べた。世界市場を意識したマーケティングスマホ世界最大手に成長したサムスンに学ぶことで、逆襲の足がかりとしたい考えだ。まずは独立独歩でサムスンと戦う強い気概を持てるかどうか。それなくして台湾のIT産業の反転攻勢はあり得ない。

台北支局 山下和成)